1/5 「蛇の曲がり根性」 三浦 遙   聖句:マタイ2:13-23

 明けましておめでとうございます。

 クリスマスの物語に登場するヘロデ王は36年間在位していました。ローマ帝国に属する王位ですが、それだけ長く強い権力を持っていたことがわかります。今回の箇所で、主の天使に従いエジプトに避難するマリア達。イスラエル民族のアイデンティティの一部である出エジプトとの繋がりを彷彿させる物語です。ヘロデ王はベツレヘムとその周辺一帯にいた2歳以下の男の子を虐殺するのですが、これはあまりにも理不尽な行いです。史実性は低いとされますが、ヘロデ王の暴力性と蛇の様に捻じ曲がった性根が強く表現された物語です。この圧政の姿は困窮するイスラエル民族の歴史と重なるものがあります。出エジプトの物語やバビロン捕囚など、暴力によって虐げられてきた人々の姿と、理不尽さによって愛する子どもを殺される親の姿には圧政による嘆きと痛みがあるのです。

 主の天使がマリア達をエジプトに避難させたのは、幼子イエスがこれから旧約聖書の歴史を受け継ぎ、第二のモーセとして指導者の姿を含めているとされますが、それ以上にマタイ福音書では神の子としてのイエスを強調する試みが各所に示されていきます。預言の成就が印象的に描かれていく箇所ですが、注目したいのは危機的状況で導きを示す神の言葉です。圧政というと、今回の大虐殺や戦争などの目に見える悲惨さを思い浮かべますが、その裏には声を上げることも許されず、押し殺された人々の嘆きがある。圧倒的な力の差によって消される怒りと悲しみの声がこの圧政と悲惨な事件の裏にはっきりと描かれているのです。

 ですが、この物語はその嘆きを神が無関心でおられないことを示しています。旧約の時代から人々が抱いていた声にならない嘆きに対して、「キリストが苦しみを共にしてくださる。慰めをも共にしている」と、旧約の時代からの約束を携えて救い主がお生まれになった。逃げ場のない嘆きに対して、「あなたの未来には希望がある」と、預言の成就と唯一無二の頼り手である神の姿を示していくのです。性根が蛇のように曲がり切っていたヘロデのようにではなく、真っ直ぐとした芯を持ち、曲がっているかのように柔軟に賢く、しかし素直さを忘れずに、新しい1年を歩んでいくことが出来ますように。

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