2/19 「あなたの賜物を」 三浦 遙 聖句:ルカ9:10-17
イエスの奇跡物語の中でも代表的である「5000人に食べ物を与える」という物語は、ルカ福音書だけでなく、他の福音書全てに記されています。それだけ、大きな奇跡であったという事もそうですが、この奇跡はほかの物語で描かれる奇跡とは少し異なった性質を持つものであるとも言われます。
今回の物語でイエスは、救いを求めてきた人々を迎え、神の国について語り、治療の必要な人を癒していたと記されています。しかし、日が傾き、夜が近づいたとき、弟子たちは、イエスに対して「群衆たちを去らせてください。」言い、その場を解散させようとしますが、イエスは「あなた方が彼らに食べ物を与えなさい。」と示します。後に記されているように、その場には男だけで5000人ほどの人がおり、単純に考えて女性や子ども達を合わせると1万人ほどの人がいたと想像できます。そんな人々に与える食べ物なんて弟子たちに用意できるわけがありません。弟子たちは、「わたし達には5つのパンと2匹の魚しかありません。到底全ての人を満たすことなどできない。」と訴えますが、イエスはそのパンと魚を取り、祈りを捧げ、人々に配るように指示を出します。すると、全ての人が満たされ、籠いっぱいにパンが残ったのでした。
この箇所がほかの奇跡と異なるというのは、この奇跡がイエスによってのみ行われたものではないという部分です。この箇所に至る前、イエスは弟子たちを派遣し、弟子たちがそれぞれの村をめぐっては奇跡の業を示してきました。この群衆は弟子たちの業と福音を通してイエスを知り、この場に集っているのです。しかし弟子たちは、それらの奇跡は自分たちよりも、イエスの力によるものであると思っているし、自分たちの賜物は多くの人を満たすことのできるものではないと思っているのです。しかしイエスはそんな弟子たちの「5つのパンと2匹の魚」という1万人以上の群衆を前にしてはちっぽけに思われるその賜物を、全ての人が満たされるように用いてくださった。弟子たちとイエスとが共にこの奇跡を起こしたのでした。
わたし達も、様々な艱難の前に、ただただ立ち尽くすしかないような無力感や絶望感を抱くことがあります。わたし一人のちっぽけな力では、大きなことや多くのことを成すことなどできないと思ってしまう。しかし、そんなちっぽけなわたし達一人一人であっても、イエスは神の御業を通して、祈りを通して、多くの人が満たされるような奇跡へと用いてくださる。あなたの賜物を必要としてくださるのです。わたし達も、誰かと比べてちっぽけだと嘆くのではなく、無力だとあきらめるのではなく、主の業のためにその賜物を捧げ、用いていくことが出来ればと願います。
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